桃とトマト

 今日は私が生まれて四十五年目です。着実におばあちゃんの階段を上っています。

Twitterのプロフに行くと風船でお祝いされ、娘には強制的にあつ森でお誕生会をすると前々から告知を受けていたので夜にはすることになりそうです。

お誕生日は自分の時間が欲しいです。私の誕生日は夏休みの初日。

十代の頃は学校に行かなくなる初日ですのでお祝いしてもらうチャンスは無く。大人になって彼氏ができても何故か七月の初めには破局することが多く彼氏にお祝いされたことは殆ど無し。

何度か結婚して子供に恵まれたら、子供が夏休みで賑やかにいるので誕生日どころかお昼ご飯に悩む日々の開始日となっています。

私は何が言いたいかというと、ロマンチックに誕生日を祝ってくれる男は早々いないと伝えたかった。

日本人だからかしらと思うこともあるが、いないものは仕方ない。

四十五回目の誕生日も静かに過ごせたらラッキーと思うでしょう。

誕生日を迎えると思い出すことがある。

「桃とトマト」

 ここ何年か誕生日を迎えると食べようかなって思うのは桃とトマト。

誕生日と桃とトマト,繋がりを感じないと思いますが私は違います。

 私が三十路手前の頃、三回目の結婚生活をしていました。私は精神的にも身体的にもボロボロな状態で家にいて家事をするのが精一杯でした。

その時の主人は仕事はできて有能な方、マイペースで私には関わってくれませんでした。

家と職場では性格が違うタイプ、嫁に優しく世話する人ではなかったようです。

それでも私は簡単なお願い事をしますが、殆ど拒否されました。

メンタルクリニックに通院したいとお願いした時も嫌々運転だけして病院に入らず車の中でずっと待つような方でした。

 頼んでもダメだと感じてから自分が調子いい時に病院行くようになっていました。

 高熱を出して辛い時に玄関に生ごみを纏めてありますから仕事に行くときに出して欲しいとお願いをした時も。

「嫌だ、なんで俺がそんなことしないといけない」

と言い、玄関に生ごみを放置してありました。

 熱があって辛いからお願いしたのですが、この仕打ち。徐々に信頼も気持ちも消えていきました。

そんな頃にに私の誕生日が来ました。

勿論、誰もお祝いしてくれません。

 近所のケーキ屋に行って自分の名前を書いたプレート付きのイチゴの誕生日丸ケーキを注文して持って帰りました。

子供の時に憧れた丸いケーキ。親は戦前生まれの親でしたので誕生日を祝う習慣がなかったのです。

それでも、母親はスーパーで売っているケーキバイキングを買ってくれてお祝い見たいのはしてくれました。

 私は丸ケーキを恥ずかしくもなく買ってひとりで食ってやろうと思い、家でいつ食べようかなって考えていたら、宅配便が来ます。しかも二件。

 クール冷蔵できた。二件の宅配物は一つは桃、もう一つはトマトでした。

宛名を見ると、桃は母親の名前。トマトは父親の名前でした。

示し合わせて送ったのかと思い。母親にお礼の電話すると、父親がトマトを送ったのは知らないという。

 話を聞いていると、別居中みたいになっている始末……。

「お母さん、誕生日ありがとう。珍しいことするから驚いたよ。なんで桃なん?」

「あ~、いつも世話になってるから、誕生日ぐらい親らしいことせんといかんなぁって思ったけど お前の好きな物が桃しか思いつかんかった。 お前子供のころ(三歳)嬉しそうにむしゃむしゃと食べとったのを覚えていたから」

 なんとまあ母親らしい答えだった。それしか覚えてないぐらいに親子コミュニケーションをとってなかったたのだ。

父親にもお礼の電話する。聞くと

「あ~、お前が小さい頃(三歳)旨そうにむしゃむしゃとトマトを丸ごと喜んで食べていたから、お父さんそれしか思いつかんかったんやぁ、お前トマト大好きやろ?喜ぶと思って お父さんが作った出荷前のトマト送ったんや」

これまた、同じことを言いよった。滑稽で仕方ない。別居してる夫婦なのに一人娘の事では同じようなことをしている。

「うん、ありがとう。めっちゃうまいわ。早速一個食べたし残りは冷蔵庫で冷やして食べるわ。お母さんが桃送ったの知ってる?」

「あ?いや、知らんわ。お父さんお母さんと離れて暮らしておるし、家に帰るとお母さん怒って怖いんやて」

お父さんらしい答え方。お母さんが怖い、嘘じゃないやろうなぁ。本当に怖いと思ったので、とりあえずこのままにしとくしかないと思った。

 この数年後には、母親が倒れた切っ掛けで父親が離婚したいと私に訴えて離婚するのだが、それはまた違う機会にお話ししようと思います。

電話を切った後、言われた通りに桃もトマトも冷蔵庫に入れたが、一週間は冷蔵後の中を占領していました。

桃は十五個、トマトも十五個。全部私が食べました。一週間以上かけて毎日一個から二個食べて。

わかりづらいけど親の愛情表現らしいものを感じた時でした。

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